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 「JIMAインターネット医療フォーラム2008」演者発表要旨



                      ■日時 2008年11月19日(水) 13:00〜17:00

                      ■場所 TKP銀座ビジネスセンター カンファレンスルーム


  <特別講演>


 「少数の専門家と多数の非専門家」

       開原 成允  (国際医療福祉大学教授)

抄録:

 少数の専門家と多数の非専門家とどちらが正しい判断を下すかと聞けば、日本では従来は少数の専門家の方が正しい判断をすると考えられていた。また、例えば、人は誰でも苦労して作ったものは、高く売ってお金を儲けたいと思うと考えられていた。お金を払うことは良いことで、そのために契約関係もでき何か不都合がおきれば責任を問うこともできる。こういう思考タイプの人を仮にここでは「秩序型思考」の人ということにしよう。
 しかし、社会の情報化が進むと、上のことは二つとも必ずしも正しくないことがわかってきた。インターネットの上には無料で提供されているコンピュータプログラムや非常によく整理された知識が数多く提供されている。ウィキ百科事典は、無料で提供されているのみでなく、誰でもそれに追加したり修正したりすることができる。インターネット世界の特徴は、参加している人たちが無名の人であり、しかも非常に数が多いことにある。つまり、「不特定多数」というところに特徴がある。こうした世界を受け入れ、歓迎し、自分もそれに参加しようと思う人を仮にここでは「ウィキ型思考」の人ということにしよう。「ウィキ Wiki」とは、元はハワイ語で迅速というような意味だそうであるが、もちろんウィキ百科事典のウィキのことである。
 大変面白いことであるが、人には、上の二つのタイプがあり、はっきり分かれるような気がする。「秩序型思考」の人は、「ウィキ型思考」が、怪しげに見えるようで、不特定多数の人間など信用できないという。また、誰も責任がとれないから、そもそも問題が起きた時に対処できないことを心配する。ウィキ百科辞典なども、もしその記載が誤っていたら誰が責任をとるのかと心配したり、著作権はどうなるのだと心配する。

 実は、私は「ウィキ型思考」の人間である。なぜ、そうなのか自分でもよくわからないが、敢えて理由を考えると、人間は誰でも好きなことをやってそれを完成させたいという気持ちを生まれながらにして持っていると思うからである。難しく言えば、「自己実現」と言ってもよい。3歳の子供が頼まれなくても積み木を積んで、それができると喜ぶのと同じである。そして積み木が完成すると人に見てもらいたくて周辺の人を呼んでくる。この気持ちは純粋で信用でき、大人になっても決してなくなってはいない。この根源的な人間の気持ちの上にできたシステムの方が人工的な秩序よりははるかに信用できると私は思う。
 また、専門家よりも不特定多数の方が信用できるとも私は思っている。「不特定多数」とは非専門家の集まりだと思いがちであるが、決してそんなことはない。不特定多数の中にはさまざまな分野の専門家もいて、例えば「ウィキ百科辞典」を見ている。間違っていればなおしたくもなる。これは私自身もそうだからたぶん他のウィキ思考型の人も同じであろう。そうなると、少数の専門家よりもより正確なものができるのも当然という気がする。それに専門家は、ある限定された分野については豊富な知識は持っているかもしれないが、豊富な知識と健全な判断は同じではない。健全な判断には広い知識も必要であるからである。
 最近裁判員制度が制度化されたが、これがその良い例である。素人の一般人をなぜ裁判官がいるのに裁判に参加させなければならないのか? それは、素人の判断の方が正しいからである。
 実例を一つあげよう。私は、日本ユニセフ協会の評議員をしているが、ユニセフ協会は児童ポルノを禁止する法案を提案しているが日本ではなかなか実現しない。先進国の中で児童ポルノを保持していて罰せられないのは、日本とロシアだけということである。なぜ、日本で法律ができないのか私は不思議であったが、その理由は外国には陪審員制度があるからだと聞いて納得がいった。つまり、日本は、法律を作るとなると、専門家は、表現の自由であるとか、児童ポルノの定義であるとかを細かく気にして議論しはじめるからいつまでも法律ができない。しかし、陪審員制度の国では、そうした裁判があると陪審員が皆罰するべきであるというので、簡単に罰することができ、それが判例になるのだそうである。この点に関しては陪審員の判断が専門家に勝っているのは明らかであろう。
 不特定多数といえば、選挙制度も同じである。これも、一般市民といういわば素人に国の重大な方向の決定をゆだねていることになる。行政の専門家である官僚や、政治の専門家である政治家よりも、不特定多数の一般市民の方が長い目でみれば健全な判断を下すという考え方に他ならない。
 以上のことを考えると「ウィキ型思考」は今にはじまったものではなく、そもそも民主主義の思想と合い通じるものがある。
 私は、今の日本社会は、あまりにも「秩序型思考」が強すぎると思っている。もっと、人間の根源の気持ちに根ざした制度や社会を作らなければならない。好きなところでボランティア活動をし、好きな事業に寄付をし、それを皆が見て共感するような社会こそが、これからの日本が目指すべき社会である。
 そんな気持ちから、私は今マクドナルド・ハウスを作ることに努力している。このハウスは子ども病院の近辺に入院した子どもの家族を宿泊させる施設である。すべて寄付で建設され、ボランティアで運営されている。芸能人や、アメリカ大リーグの選手なども訪れて、家族と話したり、寄付をしてくれたりしている。これは世界的な規模で展開されている活動であるが、日本にも、こうした風土が育ちつつあると実感している。(詳細は、http://www.dmhcj.or.jp/を参照されたい。)
 ただ、そうした社会でも、もちろんある程度の秩序は必要である。できれば、そういう秩序を作るのもボランティアであることが望ましい。リナックスでも、ウィキ百科辞典でも実はそうした秩序を維持しているボランティア的な人または組織があるから、これが運営できているのであろう。
 JIMAもその意味では、ウィキ社会の秩序をまもる努力の一つとも解釈できる。皆で、JIMAを守り立てて行くことによって、日本にもウィキ社会を作ろうではないか。


<一般口演>


1) NTTデータのレセプトオンライン接続サービスと将来像

       石黒 満久(株式会社NTTデータ ヘルスケアシステム事業本部)

要旨:医療機関・薬局等は医療保険負担分の報酬について診療報酬明細書(レセプト)をもとに健康保険組合などに請求を行っていますが、これからは「レセプトオンライン請求」が導入されることになり、各医療機関・薬局等は「レセプトオンライン請求」を行うため、高セキュリティなネットワーク接続環境を整備することが求められています。
 平成20年3月にレセプトオンライン請求に関するセキュリティ条件を定めた厚生労働省のガイドラインが改定されたことにより、一定のセキュリティ条件を満たせば、レセプトオンライン請求をインターネットを利用して行うことが可能となりました。
 NTTデータが提供を行う「レセプトオンライン接続サービス」は、医療機関・薬局等のインターネット環境に専用のルータを設置するだけという簡単な方法により、インターネット上に医療機関と審査支払機関との間に仮想的な専用線を構築し、高セキュリティなレセプトオンライン請求専用のネットワークを提供するものです。このたびは、本サービスの内容と将来像についてご説明いたします。


2)社会貢献事業:患者団体向け無料ホームページ作成ツール『かんしん工房』
      〜ツール提供開始後の活動報告と今後の展開について〜

       大森 輝雄 (エンパワーヘルスケア株式会社)

要旨:2007年10月、患者さんや患者団体のみなさま、そして患者団体同士のつながりをサポートしていきたいという想いのもと、患者団体向け無料ホームページ作成ツール『かんしん工房』は誕生しました。しかしながら、患者団体におけるホームページのニーズは高かったものの、実際に利用していただくまでには予想以上の時間がかかってしまいました。
今回は、この1年間で弊社が行ってきたプロモーション活動や、患者団体のみなさまに直接お会いして伺った”現場の声”をご紹介すると共に、今後の展開についてご説明いたします。


3) eヘルスにおける情報の質の確保について

       江浦 瑛子1) 扇原 淳1) 三谷 博明2)

       1)早稲田大学人間科学部 2)日本インターネット医療協議会

要旨:家庭におけるインターネット利用の普及により、患者にとって満足度の高い医療を実現するには、インターネットを利用して得られる医療情報の信頼性を確保することが重要な課題となっています。日本医師会や日本インターネット医療協議会 (JIMA)などが、医療施設ホームページむけのガイドラインを作成していますが、日本のインターネット上の医療情報の質や、医療情報を扱うサイトの信頼性については、明確に保証されていないのが現状です。そこで、日本よりも早く、この種の問題に対処してきた海外の状況について、eヘルスを扱っている海外団体のHPや研究論文などから、ガイドラインの内容や普及状況などを調べ、日本のものと比較していきます。そこから、医療分野でのインターネット利用において、日本が抱えている問題点や、今後の方向性について検討していきたいと思います。


4) 患者の求める情報とその提供法について

       三谷 博明 (日本インターネット医療協議会事務局長)

要旨:国の医療制度改革において、「患者の視点に立った、安全・安心で質の高い医療が受けられる体制の構築」、及び「医療情報の提供による適切な医療の選択の支援」を行っていくことが目指されている。これを受け、平成19年度から、都道府県による医療情報の集約と公表(医療機能情報提供制度)、広告できる事項の拡大等の制度・措置が開始されているが、特にインターネットを使った情報提供は自治体によって取り組み方に差が出始めている。平成20年度は、さらに「住民・患者に対し、自分の住む地域の医療機能や医療機関の連携の状況を医療計画により明示する」ことになっているが、これらの取り組みに対する地域住民への周知や広報に不足はないだろうか。
 自治体等の公的機関からは、客観性と公平性のある情報が、医療機関自身を含む民間レベルからは、患者のニーズに応えるきめ細かな情報の提供・公開が期待されるが、そのひとつのかたちとしてインターネット上における医療情報ポータルなるものが構想される。すでに自治体においては、医療機能情報提供制度に基づいた情報検索ができるポータルが、また民間においては、病院情報だけでなく、口コミ情報や患者体験情報等の書込み・閲覧もできる各々特長あるポータルの構築・運用が始まっているが、情報の質や提供法をめぐる課題も出始めている。
 実際例をとりあげながら、その課題を提起してみたい。


5) 京都府リハマップ
      〜医療機能情報提供制度の夜明け前〜

      中野 博美 (京都きづ川病院理事長、京都府医師会脳卒中登録事業委員会
               委員長)

要旨:脳卒中登録事業委員会では、脳卒中患者の種々のデータの登録を行うことにより、京都府における脳卒中に係る統計情報から病態像の疫学的解析報告を行っております。同事業では、患者が脳卒中登録に参加することによる、自身へのメリットを模索しておりましたところ、脳卒中による機能障害に対すリハビリ情報提供と、それを遅滞なく利用できるシステムが必要との結論に至りました。地域リハビリテーション資源の静的・動的状況を把握し、患者や府民に提供することが登録患者本人に対する「価値の創造」ではないかと考えています。また利用者の視点を重視する見地から、一般府民が自由に簡便にアクセスできるような情報検索モダリティの開発が望まれるところであります。さらに登録や調査に関しては、登録者のデータを利用しますのでシステム側の負担は省力化出来る事になります。更に機能を進展させて施設間連携状況の解析も視野にいれておるところです。京都府リハ・マップを開発により、府民に地域リハビリテーション資源のナビゲーションツールとして利用をして頂けるのではないかと考えているところです。


6) 「情報薬」開発のバックグランドとその応用

          辰巳 治之 (札幌医科大教授、日本インターネット医療協議会理事長)









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