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患者が求める医療機関情報内山映子(慶応義塾大学特別研究助手) 花井 荘太郎(国立循環器病センター高度情報専門官) 平成13年11月に「医療制度改革大綱」が閣議決定され、少子高齢化が進行している21世紀のわが国においても持続可能な医療制度の大枠が示された。この大綱の基本的視点は、現在の国民皆保険体制、医療機関へのフリーアクセスの原則を維持しながら、限られた財源の中で将来とも質の良い医療サービスを提供するために医療提供体制の効率化、医療費の適正化を図るための制度改革を行うとしていることである。 中でも医療提供体制については、医療コンシューマである患者による病院選択を機能させ、医療の質の向上と効率化を促すこととしている。これを端的にいえば、市場原理に基づく競争と選別により、良質の医療を低コストで提供できる体制を構築しようとする方策と考えられる。医療サービスは本質的に弱者救済を目的とするものであり、市場原理の導入が患者にとって真に利益となるか否かについては議論の余地もあるが、これまでの医療をお仕着せと感じる患者にとっては、自己選択権行使の機会が増えることは望ましいことであろう。 コンシューマによる病院選択を促すには、病院の機能上の特徴、治療についての考え方、医療スタッフの配置状況とその専門性、設備、アメニティ、諸経費等の「医療機関情報」の流通が前提となるが、その最も効率的な流通媒体としてはインターネットが想定されている。実際にいくつかの病院検索サイトがすでに運用されており、情報発信に積極的な医療機関も自院の詳細情報を掲載するようになりつつある。また、保険者、行政においても被保険者支援や市民支援の一環としての医療機関情報データベースの整備が検討されている。これらのことから医療機関情報は、直接的なケア情報ではないとしても、インターネットにおける医療関連情報の大きな部分を占めるようになっていくだろう。 現在提供されている客観情報は、病院所在地、標榜診療科、診療時間程度に過ぎず、いくつかのサイトでは口コミ情報によりスタッフやアメニティなどに関する情報を補完しているが、自己選択のための基礎情報としては極めて不十分といえる。しかしながら、病院選択に有用な情報とは何であるかは、受け手である患者、送り手である医療機関や保険者の双方にとって必ずしも自明なことではない。この点を明らかにする目的で、病院を選択した理由、患者が病院選択に際して必要としている情報などについての患者意識調査がマスメディア、保険者などにより行われてきた。これらの調査によれば、多くの患者は「アクセスに便利なこと」、「医師の紹介」など直接的な医療内容とは関係の薄い理由により病院を選択しているが、その一方で病院が施行できる治療法などの情報を欲していることがわかる。しかしながら、これらの調査は比較的軽症な外来患者を対象としており、疾患ごとの特性を考慮していないため、極めて平均化、一般化された患者像を描き出しているに過ぎないと思われる。 そこで我々は、いくつかの慢性疾患の患者を対象とし、疾患別、疾患経過年数などの個別要因に着目して病院選択のための情報ニーズの調査を行った。その結果によれば、30%の患者が発症時から2回以上にわたって病院を変えており、現在の状態に落ち着くまでに回り道があることがうかがえた。通院の利便性は、発症時には他の調査でも明らかなように最大の選択理由となっており、年数経過時も重要な要素となってはいるが、医師、看護師への信頼感、病院の設備の充実度、治療方針や検査結果の説明が十分かどうかなどが年数経過とともに着目されるようになる。しかしながら、これらは客観的評価が困難な情報であり、適切な指標化が課題となろう。一方、医療機関選択に際して必要とする情報の上位には「病院の専門性」があげられた。以上は疾患の種類によらずニーズが高い要件であるが、「治療成績」、「疾患別の治療内容」、「医師個人に関する情報」、「リハビリテーションに関する情報」等の重要度は疾患の種類によって差異があった。 調査の結果は、病院選択のための情報は疾患の種類、経過年数等の個別要因をも考慮して準備されるべきであることを示唆しているが、現在は客観事実に基づいた選択が行われていないことも示している。これまでは客観的な情報の提供が少なかったことが理由の一つに考えられるため、本年4月に告示された「医療機関の広告規制緩和」では病院の機能、治療実績、専門性に関する事項の広告が可能となった。インターネットにおける情報提供は広告には該当しないとされているが、当面はこれらの事項に準じた情報が流通するようになると推測される。しかしながら、客観事実であったとしても、医学知識、医療制度に関する知識が不十分な市民が、その意味するところを的確に理解することは難しい場合もある。さらにその評価となれば、自分にとっての適合性の判断が必要になり、誤解に基づいて病院を選択すれば、失望するだけではなく適切な治療の機会を逸することもあり得る。したがって、個別ニーズに配慮した情報提供とともに、情報を読み解き、適切に活用するための支援情報、支援組織も必要となると考えられる。 |