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麻疹発生DBのご紹介菅原 民枝(国立感染症研究所感染症情報センター) 西藤 なるお(西藤こどもクリニック) 砂川 富正(国立感染症研究所感染症情報センター(WHO出向中)) 大日 康史(国立感染症研究所感染症情報センター) 多屋 馨子(国立感染症研究所感染症情報センター) 上野 久美(国立感染症研究所感染症情報センター) 安井 良則(国立感染症研究所感染症情報センター) 岡部 信彦(国立感染症研究所感染症情報センター) 麻疹は定期予防接種対象疾患であり、2001年以降から各方面で取り組まれているはしか0キャンペーンをはじめとする麻疹対策への努力によって接種率は近年著しく向上し、患者数も減少した。また、2006年4月に麻疹および風疹の2回接種法および麻疹風疹混合ワクチンが定期予防接種に導入されることになった。 このような麻疹排除(elimination)に向けての予防接種政策の充実と相前後して、茨城県南部において2006年4月上旬から小、中学校、高校を中心に麻疹患者の集団発生がみられた。また、千葉県にも流行が拡大していると思われる。 現在、麻疹は感染症法においては5類定点把握疾患であり、その全数を把握することができていない。また、その集計は医療機関の届出から2週間遅れ、報告基準により、小児科定点からは典型的な麻疹症例のみ、基幹定点からは、検査診断を待ってから15歳以上の麻疹患者が報告される。その情報量も都道府県別年齢分布毎の患者数にとどまる。実際に茨城県南部の事例においても、流行の探知は臨床医からの情報提供であり、定点からの報告数が増加する前に調査や対策が実施された。その間の流行拡大は認知が困難であったのが現状である。その根本的な対策はサーベイランスの強化であり、そのためには感染症法に基づいた全数届け出をそろそろ求めるべきところであるが、直ちに変更できることではなく、さりとてそれまで状況を看過できない状況にあると言える。 こうした状況を受けて、法には基づかないが、医師の自発的な協力に基づき、より迅速な、そしてより多くの情報を、多くの医師から得、関係者の間での情報共有するシステムとして「麻疹発生DB」を5月12日に構築した。その内容は国立感染症研究所感染症情報センターのホームページに掲示し、各医師により登録することができる。 (http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/meas0605.html) ここでの登録における疾患定義は、以下の内一つに該当する者である。 1)診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ以下の3つの基準をすべて満たすもの ア.全身の発疹(回復期には色素沈着を伴う) イ.発熱 ウ.咳嗽、鼻汁、結膜充血などカタル症状 2)上記の基準は必ずしも満たさないが、診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ病原体診断や血清学的診断によって当該疾患と診断されたもの 1)は、現在の感染症法に基づく発生動向調査の麻疹の届け出基準であり、2)は成人麻疹の届け出基準である。このいずれもとしたことで、修飾麻疹や麻疹様症状の患者も登録することができ、より迅速に、またより広範囲に麻疹の発生状況を捉えることを可能とした。また、麻疹様症状患者の内、検査によって後日麻疹と確定された、あるいは否定された場合には、その旨再報告することによって麻疹患者数を変更できる。登録を求めている内容は、都道府県、市区町村、報告日、発症日(発熱日)、症例の性別と年齢、検査依頼の有無、検査方法と結果、ワクチン接種歴、接種年月日、製造メーカー、ロットNo.、報告基準、転帰、報告者氏名、電子メールアドレス、メモ1<関係者に公開>、メモ2<非公開・個人用>である。 このシステムには初診時の情報(患者の年齢、性別等)に加えて、後日明らかになった時点で情報の追加、修正が行える。例えば、検査結果、母子手帳に戻ってのロット番号等の情報、転帰がそれにあたる。このために、報告者のメールアドレスをキーとして個別にパスワードを発行し、初診の情報を登録した方のみが後日修正できるように工夫されている。 ここで蓄積された情報の内、都道府県別市町村別の患者数のみが一般に公開されている。同時に、より詳細な情報が医療従事者、衛生部局関係者で情報共有される。先の登録情報の内、医療従事者、衛生部局関係者に公開されないのは、入力者、そのメールアドレス、メモ(非公開用)のみである。 運用を開始してから一ヶ月目にあたる6月12日の時点で、登録は27件であった。現状ではこのような少数に止まっている。一方で医師会や自治体をあげてこの登録に参加し、地域での情報共有のプラットホームとして活用されているところもある。しかし、現段階でものシステムを知る人は限られており、これはひとえに周知不足によるものであり、我々はさらなる改善の努力を行う必要がある。 今後こうした麻疹発生DBにおける迅速な情報共有の意義が理解され、活用されることによって、本システムの有用性がますます向上し、麻疹対策につながることを期待している。 |