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 「JIMA'99第一回会員研究会」発表要旨




 「一般人向けの医療に関するオンライン会議の意義―COSMOSネットでの経験―」

                 上出良一(東京慈恵会医科大学皮膚科)
                 三谷博明(COSMOSネット運営委員)

 


1.はじめに

インターネット上ではメーリングリストや掲示板などを用いた医療関連サイトが多数あるが,それ
らが病気を持つ人やその関係者に果たして役立つのか,また,参加する医師など医療専門職はどの
ように関わって行くべきか,短い経験ではあるが,COSMOSネットでのアトピ−性皮膚炎を中心とし
た掲示板上(http://www.iijnet.or.jp/cosmos/forum.html)でのやり取りを中心に考えてみたい.

2.「アトピー情報COSMOSネット」の経緯と概要

1996年5月に、「アトピー情報COSMOSネット」のインターネットのホームページで、患者や家族、
医療関係者が双方向で情報や意見交換ができる「オンライン会議室」を始めた。
参加者は、患者、またはその家族関係者、及び医療関係者である。会議室利用時にオンライン上で
登録してもらうようになっている。開始よりの登録者数は1999年10月15日現在で累計580名である。
ID、パスワードにすると、完全クローズドになるが、面倒がって入ってこなくなる。また、完全公
開にすると、関係のないひとが入って来るため,ちょうど、真ん中をとったが,これがよかったよ
うである。会議室への書き込みは、全員がしているわけでなく、閲覧(ROM)だけの人も多い。また、
テーマにより、意見交換が活発になってくると、同じ人が何度も書き込みをすることがある。書き
込みに際しては、無責任な書き込みを避けるため、原則的に実名でお願いしている。一応、登録制
であるが、ID、パスワードはかけていないのでアクセスは自由。医療関係者の立場で書き込みいた
だく場合は、所属の病院、クリニック名、専門科目等がわかるよ
うにしてもらっているが、完全には徹底しきれていない。

3.参加者の分類

・ 患者ならびに関係者
・ 医療専門職
・ 医師(合計13名)
・ 皮膚科医		6名
・ 小児科医		2名
・ アレルギー科医	2名
・ 内科医		1名
・ 不明			2名
・ 薬剤師
・ 自称?専門家
・ 商品などの売り込み

4.書き込み記事件数

1996年5月〜1999年10月15日 2,240件。

参加者の増加につれ、医師の書き込みが増えているが直近の1ケ月間だけで350件もあった。

<書き込み記事件数の推移>

1996.5-1997.5(1年間)	220
1997.5-1998.5(1年間)	385
1998.5-1999.5(1年間)	618
1999.5-1999.10(5ケ月間)	1,017
-----------------------------------------
 合計	2,240

5.投稿内容の分類

・ アトピ−性皮膚炎
・ 治療薬:ステロイド,FK506
・ 副作用:脱ステロイド,リバウンド
・ 検査:IgE
・ スキンケア
・ 食物等
・ 他の皮膚疾患
・ 蕁麻疹,光線過敏症,ヘルペス
・ その他

アトピ−性皮膚炎の治療における混乱を反映して,ステロイド剤外用の可否,脱ステロイドやリ
バウンドの対処法についての質問が極めて多い.

6.回答内容

・ 経験者,克服者からのアドバイス,励まし
・ 専門職からの適切なアドバイス
・ 医療機関,療法などについてのいわゆる評判
・ 商業目的のいわゆる怪しい?参加者(商品宣伝など)
・ これには排除ならびに無視をするという自浄作用がある.

回答は医師からの専門的アドバイスが得られること以外に,同じ病気で悩むもの同士の交流や,
脱ステロイドの経験者,克服者からのアドバイス,励ましなど患者さん同士の互助的色合いが濃
いのが特長である.

例えば以下のような投稿タイトルからも想像がつくであろう.

例1)赤ちゃんの時の肌を思い出して - 久美子 19:00:33 9/24/99 (7) 
 楽しく行きたいのです - 木戸 るみ 02:07:52 9/25/99 (6) 
  どうしても治りたいので - 久美子 08:38:00 9/25/99 (5) 
   お気持ち分かりますよ - 木戸 るみ 23:28:11 9/25/99 (0) 
    着る色を工夫するのもいいですよ - 河野 靜 19:35:07 9/25/99 (3) 
     具体的にどんな色を? - YUMI 00:46:08 10/05/99 (2) 
      私の経験では - 河野 靜 01:00:54 10/07/99 (1) 
       なーるほど、いい機会です - YUMI 07:13:17 10/07/99 (0) 

例2)思うこと - 若子  16:52:31 10/08/99 (2) 
 前向きになるには - 上関 久美子 07:11:57 10/09/99 (0) 
 後ろ向きもいいと思うよ - さとこ 00:58:47 10/09/99 (0) 

例3)漢方薬を飲み始めたら - keiko 18:51:34 10/25/99 (11) 
 自分の場合・・・ - ひでのり 16:10:17 10/28/99 (0) 
 漢方の副作用 - えいこ 00:19:07 10/27/99 (0) 
 試してみる価値アリ - さとこ 23:05:26 10/26/99 (0) 
 漢方治療! - Kiyosi 20:24:16 10/26/99 (0) 
 顔へのステロイド使用量は - 石本 22:13:46 10/25/99 (0) 
 漢方薬以前の問題では.. - そうくん 20:02:51 10/25/99 (5) 
 ごめんなさい。書き方が悪かったです - keiko 19:14:07 10/26/99 (4) 
 追加です - keiko 19:17:59 10/26/99 (3) 
 悪化原因をはっきりさせるのは難しい - 石本 22:17:12 10/26/99 (2) 
 そうですね - そうくん 23:43:59 10/26/99 (1) 
 みなさん、ありがとうございました - keiko 14:26:52 10/27/99 (0) 

一方,多数のアトピ−性皮膚炎患者さんが参加していることを利用して,商品宣伝と考えられる
投稿も時に見られる.

例4)アトピーに塩と温泉水を試す会

	昔から日本人が行っていた塩療法で皮膚症状を改善します。
	飲む温泉水で体内浄化をします。 
	名 前 波の花 

例5)「竹酢液」について

	さなだといいます。こんばんは。 
	ある人に薦められて、竹酢液というのを試してみたら、症状が軽くなりました。
	これ、竹を焼いたときにできる液だそうですが、販売しているところがなかなかないん
	です。
	やっと見つけたのがここです。私もここからなんとか手に入れようと思ってます。 
	http://www.terrae-h.com/BUMPURE/ 
	名 前 さなだ ゆうすけ 
	メールアドレス ********@yahoo.co.jp

例6)無料のアトピー治療 - アークメディカル 19:48:12 8/13/99 (0)

明らかに宣伝と思わせるもの以外に,利用者を騙って巧妙に推奨する手口もある.しかし,ある
程度慣れるとそのような宣伝的投稿は判別でき,悪質なもの以外それを削除しなくとも,参加者
が無視するという形で,会議室の自浄作用が行われているようである.

7.フレーミング

残念なことに顔が見えないオンライン上でのテキストのみでの論議ではしばしば加熱し,相手を
誹謗するなど,いわゆるフレーミング(flaming)が起こることもある.

例7)アトピーの治療にどのように臨むか Part.II -

 **さんの会については、会のネットワーク会員予定の先生のご意見を伺いたい - 
 ご意見ありがとうございます。
 理論が疑問だとしているだけです
 議論のやり取りに一言ゆうてもいいですか?
 こんばんは。 -
 ちがった山? -
 そうではなくてぇ -
 栄養学の記載を否定するのではないのです。  
 いいとこ取りというわけには行かないでしょ -
 アトピーという疾患の多様な病因、そして、研究者の本能、そして、**理論への修正案 - 
 I氏の誤解点及び独特の理論展開 -
 中傷でないことは理解してください。(**さんの発言の変化) -
 見苦しいですよ -
 乗りかかった船ですから -
 やっと意味がわかりました。 -
 わかっていただければいいのです。 理論だけがおかしいので、実践されていることは大きな
 問題ではないのですよ。

このようなフレーミングもどちらかが参加しなくなることで,比較的短時間で沈静化することが
多いが,公序良俗に反する場合は会議室管理者の介入が必要かも知れない.参加者はあくまでも
討論の場であることを自覚し,建設的な意見交換に努めるべきであろう.

8.従来の医療システムとの比較

これまでの病院や診療所などの医療機関における診療や,マスコミなどを介して持たされる医療
情報と比較してみる.

・ 個別医療相談が公開医療相談となる
・ 患者同士の励まし合い,情報共有が可能
・ 孤独感からの解放
・ 問題点
・ 誰でも参加できるので悪意を持って入ってこられると崩壊?
・ フレーミング回避
・ 最終的には自己責任

オンライン会議室の持つ利点を生かし,既存の医療情報源との相互利用でよりよい医療が実現さ
れることが望まれる.

9.医師が参加する際の心得

・ 話題は医学的ではあるが,一般社会人同士の水平なコミュニケーションであることを忘れない
 よう
・ 同窓会で友達から病気の相談を受けたと思えばよい
・ 受容的傾聴,共感的態度をもって参加する
・ 専門職としてのコメント,情報提供はわかりやすく書く
・ 科学的でなく,医学的に誤りと思う書き込みがあっても,高圧的な意見や断定,誹謗はしない
・ 論争は学会で行えばよい
・ フレーミングになりそうなときは,追記しないでまずはうち切る
・ ネガティブな内容の投稿は一晩寝かせるという原則を守る
・ 判断は参加者個人に任せる

10.将来像

・ 既存の医療システムとの相対的位置づけ
・ コアとなる投稿者
・ 患者中心に行い,参加者個人の判断に任せる
・ 医療者も積極的に参加を
・ 一種の洗練された自治的医療コミュニティーとして存続させたい.
・ 他の同様システムの現況は?

11.おわりに

わずかな経験ではあるが,インターネットを利用した情報交換はこれまでの医療の仕組みを補完
するのみならず,新たな医療システムを構築する可能性を秘めている.今後ともこのオンライン
会議室が多くの方に有益な情報提供を行うと共に,互助的環境を形成していくことを望みたい.






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