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 「eヘルス倫理コード」検討資料



 



 ネット上の医療(健康)サイトの質の確保をめざすガイドラインの最新報告


     以下の資料は、日本インターネット医療協議会が毎月発行している会員
     向け「JIMAニュース」より抜粋整理したものです。
      

                      文章責任:三谷 博明(事務局長)

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【1】ネット上の医療(健康)サイトの質の確保をめざすガイドラインの最新報告
    〜 その1 CHCFの調査レポートから 〜
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 先月ご案内のように、JIMAでは、今期平成13年度、厚生省の厚生科学研究費補助
金による研究事業を辰巳理事長が研究代表者として受けるかたちで実施させていた
だいています。研究テーマは「医療・保健分野におけるインターネット利用の信頼
性確保に関する研究調査」ですが、ただ今、アンケート調査も完了し、報告書の作
成に入っているところです。JIMAでは、これまでインターネット上の情報やサービ
スの質の向上をめざす立場から、インターネットの普及が日本よりも早く、この種
の問題に民間レベルで早くから対応してきていた海外NPOの活動を伝えさせて参りま
したが、今期の厚生科研事業の報告にあわせて改めて、JIMAと同じようなガイドラ
インづくりに努める諸団体の動きを逐次報告して参りたいと思います。その導入の
意味も含めまして、今号では、海外のある研究レポートを紹介させていただきます。

 アメリカのヘルスケア分野の最新の動向に関するレベルの高い研究調査活動を行
うことで知られているCHCF(カルフォルニアヘルスケアファンデーション) が2000年
の夏頃に実施してまとめた研究報告書がそれです。「A Report on the Quality of
Health Information on the Inerenet」と題するもので、標題のとおり、主にアメ
リカ国民を対象にインターネット上で提供されるヘルスケア情報の質について、初
めて科学的、客観的な評価考察を加えたものとして注目されているものです。

 調査の内容は、(1)特定の疾患に関して一般のサーチエンジンで検索して得られる
情報にはどのようなものがあるか、(2)医療(健康)サイトで提供される情報は、どの
程度正確であるか (3)これらのサイトで提供される情報を理解するには、どのくら
いの読解力を必要とするか、の3つのテーマに関するものです。

 まず、1番目の調査では、 AltaVista、Excite、Google、Yahoo! などの著名な検
索エンジンを利用して、特定の医学情報に関する検索を行ったところ、その60%し
か目的のテーマに関連する内容しか出てこなかった、また、その中身も検索エンジ
ンごとに内容が違い、その半分は製品やサービスを宣伝するものだったと報告され
ています。これについては、サイバーダイアログ社の別途の調査による、コンシュー
マーの半数以上が、ひとつのヘルスケア情報の検索に30分もかかっていてることも
引きあいに出しながら、ネットを利用した情報の検索の効率の悪さを指摘していま
す。
 次に2番目の調査ですが、医療系のWebサイトで提供されている情報を評価するた
めに、乳がん、喘息、うつ病、肥満症の4疾患に関する18の英語のサイトと7つのス
ペイン語のサイトを選び、各サイトの内容をふたりの専門家が評価しました。選定
されたサイトは、アメリカ国民によく知られたものでした。上の4つの疾患に関し、
3〜4名の専門家と患者団体代表が、患者や家族の立場から知りたいと思う質問を想
定し、仮定された質問に対する標準的な回答を用意しておきました。そして、これ
らの情報が実際のサイト上でどのくらいカバーされているかをみていきました。内
容としては、専門家の一般的なコンセンサスがある話題、コンセンサスがない話題、
また診断法や治療法に最新の知見がある話題などに分類されました。また、評者の
先入観を排するため、サイト名は隠し、通常のテキスト文に直されました。
 この評価作業の結果、設定されたトピックの数に関し、正しい情報が必要最低限
カバーされている割合は、英語の全サイト平均で乳がん 63%、こどもの喘息36%、
うつ病44 %、肥満症37%だったといいます。たとえば乳がんの専門サイトとして知
られているOncolinkでは85%というのに対し、Yahoo!では27%という結果だったそ
うです。必要な情報が足りないだけでなく、記載された内容に矛盾があったり、提
供情報の著作者名や日付の記載が、3分の1の割合いで欠けていたことも指摘されて
います。たとえば、喘息では命にかかわる危険な兆候があることに触れたり、ダイ
エット食品の安全性や効果についてきちんと触れたページも少なかったこともあげ
られています。

 そして、3番目の調査ですが、提供された情報を理解するのにどの程度の読解力を
必要とするかを評価するため、ランダムに抽出した文章のセンテンスの長さや使用
単語の難易度を調べてみました。その結果、英語のサイトの約半分は大学卒業程度
の学力がないと内容が理解できないこと、平均的な利用者にはヘルスケア情報は難
しすぎることが指摘されました。

 現在、アメリカでは、年間に一億人がインターネット上でヘルスケア情報を利用、
その70%が病気や健康管理を決めていくに際して何らかの影響を受けていることが
報じられています。医療(健康)関連のWebサイトは数万、ページ数では数百万にのぼ
ると推測され、それらは、日々更新されて中身も変わっていくため、今回の調査は
その一端をとらえたに過ぎないとCHCFは断っていますが、それでも、今日、インター
ネット上でコンシューマーが病気や健康の問題について、有益な情報を得ようとし
ていくことが難しい、人々がいつ、どのようなケアを受けるべきか決定する情報源
としてインターネットに頼り過ぎると、深刻な結果をもたらすかも知れないと警告
しています。

 このような調査を踏まえて、CHCFはインターネット上でヘルスケア情報を扱うも
のに以下のような提言を行っています。

 すなわち、ヘルスケアWebサイトのコンテンツプロバイダーには、
・あまり難解な内容にならないように注意する。
・コンシューマーグループと共同して、利用者がどのようなことを訊きたがって
 いるかをよく把握する。
・医療コンテンツについては、専門家によるシステマティック・レビューを受ける。
 この時、医療(健康)サイトの質を確保する評価基準として、HONやHi-Ethics、
 eHealth Ethics InitiativeあるいはAMA(米医師会)ガイドラインなどを導入して
 みる。
・レビューは、外部の独立した組織に行ってもらう。

 医療関係者には、
・患者が有用なサイトとそうでないサイトを区別できるように支援する。
・たとえば、簡単なWebページをつくり、内容が適切で信頼できるサイトにリンクを
 設け、新しいサイトができたりした時には、患者にe-maiでも案内してあげる。
・日常の診断の場において、情報を批判的にみることができる医師の役割を強調し、
 患者との間に信頼関係を築いておく。
・医療の専門家たちは、患者が医療ケアを受けるにあたって必要とする情報が何で
 あるかを的確につかむためアドボカシー(患者支援)グループと協力しあうべきで
 ある。

 また、コンシューマーには、
・オンラインの世界でうまく自らをナビゲートしていく能力を養っていく。
・あまりよく知られない、また公的でないサイトには注意をする。多くは営利目的
 でつくられている。情報を提供する裏側には、何かを売りつけようとする意図が
 隠されていることもある。
・具体的な症状があったり、ケアが必要な時や、情報に迷った時は、まず専門家に
 相談してみる。
といったようなことをすすめています。

 そして、最後に、これらのことをスムーズに進めていくには、政府、非営利セク
ター、コンシューマー・アドボカシー組織、企業、医療専門家、その他公益に関わ
る人々の相互の協力が不可欠であることを強調しています。
 以上、簡単にサマリーを紹介させていただきましたが、この調査レポートは、ア
メリカ医師会誌(JAMA)でも紹介され、政府関係者にも参考資料として供せられたと
いうことでした。
 このCHCFのレポートを読んで、われわれが厚生科研の一環として2000年の春にと
りまとめさせていただいた国内のWebサイトの調査研究と対比してしまいましたが、
似たような研究目的でありながら、向こうの研究グループのシステマティックな研
究手法と、対象サイトのコンテンツを定性的、定量的に分析してみる徹底さには驚
嘆させられました。今後の参考にしたいと思います。
 さて、次回は、アメリカの民間ガイドラインについて紹介させていただきます。

■参考サイト:
・CHCF(California HealthCare Foundation)
  http://ehealth.chcf.org
・JAMA(The Journal of the American Medical Association)
  http://jama.ama-assn.org/

                              (2002.2.28)

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【2】ネット上の医療(健康)サイトの質の確保をめざすガイドラインの最新報告
    〜 その2 URACのヘルスWebサイト基準の紹介 〜
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 前号では、インターネット上の情報やサービスの質の向上をめざす海外NPOの活動
紹介に先立ち、実際にネット上で提供されるヘルスケア情報の質を評価したアメリ
カのCHCFの研究報告をとりあげさせていただきました。
 同報告書では、コンシューマー向けに提供されるヘルスケア情報の中身において
深刻な問題があること、またこのままでは潜在的なハザード(potential hazards)の
危険性があることを指摘した上で、情報の質を高め、利用者の安全を守るための具
体的な提案が行われています。
 そのひとつとして、情報提供者がWebサイトのコンテンツの質を高めていくにあた
り、民間のプライベートセクターで提案されている倫理規範やガイドラインなどを
評価手段として採用することをすすめています。
 Health on the Net(HON)、Hi-Ethics、eHealth Ethics Initiative、AMA (アメリ
カ医師会)Guidelinesなどですが、この他にもURACがよく知られています。eHealth
Ethics Initiativeのeヘルス倫理コードにつきましては、以前に詳しく紹介させて
いただきましたので、今回はURACのガイドラインを紹介させていただきます。

 URACは、アメリカ認定保健医療委員会として、保健医療産業に基準を設けるため、
医療機関、保険会社、監査機関、コンシューマーが集まって1990年に設立された非
営利団体です。2001年7月にヘルスWebサイト基準 (Health Web site Standards)を
策定し、医療サイト認定プログラムを開始したことが報じられています。

 この認定プログラムの対象者は、

・ ヘルスケアに関するヘルスプランや保険会社
・ 病院やクリニックなどの医療機関
・ 健康管理団体やケアハウス
・ インターネットその他の電子媒体を利用して健康(医療)情報を提供する機関
・ 上記の業務内容を複合的に提供する団体
となっています。

 URACの認定を得るには、情報の開示法、情報コンテンツとサービスの提供法、外
部へのリンク、プライバシー保護、セキュリティ等について、必要な基準を達成す
ることが求められます。
 いずれの項目についても、細かなガイドラインが規定されていて、チェックポイ
ントは50項目にものぼっています。
 詳しく見ていきますと、まずWebサイトで提供される情報やサービスについて、
Webサイトの利用者に以下のような内容を予め公開すべきとしています。

 a)医療コンテンツ、コミュニケーションサービスの提供、個人の健康情報管理、
  または商業サービスの内容に関する情報
 b)サービス提供にあたっての利用規約 
 c) 下記のような制限事項を含むサービスの利用手順、制限事項
  ・利用者の個別の健康状態に応じたカウンセリング
  ・緊急時の医療相談
 d) 利用者と他の参加者の権利と責任

 また、Webサイト所有者に関する情報として、

 a)サイト所有者やWebサイト(製品、サービスや関連、支持団体を含む)に関する主
  な投資情報、利益情報。
 b)住所、正式名称を含むWebサイト所有者情報
 c)Webサイト所有者に関する更なる情報 (年間報告書など)の取得方法、
 なども明示すべきだとしています。

 さらに、Webサイトのコンテンツの編集方針を利用者に開示することを基本として
Webサイト上で広告や出資等の資金提供を受けていある場合には利用者にその事実を
開示すること。また、資本提携関係があるスポンサーと医療コンテンツの関係に関
し、 検索エンジンの結果に優先的にリストされるスポンサー名や製品がある場合に
はその事実を開示すること。これらのスポンサーからコンシューマー向けに提供さ
れる情報がある場合はその情報源も明示すること。コンテンツやサービスの提供に
際しての共同ブランディングの有無と、WEbサイト上での広告宣伝活動に関する方針
を利用者に告知しておくこと、などを求めています。さらに他サイトとのリンクに
基づく金銭的、営業上の関係がある場合にはこのことも開示すべきだとしています。

 次に、医療コンテンツの編集方針に関しては、Webサイトで提供されるすべての医
療コンテンツに関する編集評価プロセスを開示することをあげています。具体的に
はコンテンツの著者名(または)情報源を明らかにすること、コンテンツの最終更新
日を記載すること、また文言やデザイン、配置場所によって利用者が広告情報と医
療コンテンツを明確に区別できるようにすることを求めています。
 この中には、たとえば、臨床経験や学術研究に基づく医療コンテンツを掲載する
場合は、そのコンテンツの正式著者名を明記することもあげています。

 そして、医療コンテンツに携わるすべての著者の(著作権も含めた)利害衝突に関
する方針を策定しておくこと、また利用者が容易に情報を検索し、読んで理解する
ことを可能にすることを求めています。
 また、サービスに関しては、たとえば、Webサイト上で自己診断ツールを提供する
際は情報源やツールの根拠、あるいは自己診断ツールの最終評価日なども明記すべ
きだとしています。さらに、サービス提供で医師との連携がある場合には医師との
連携が倫理規範によりカバーされているかどうかが利用者にわかるように告知し、
同時に、医師が倫理規定を確実に遵守できるシステムをサイト上で確立しておく必
要があるとしています。その中には、サービス提供責任者の認証情報(可能であれ
ば、医師の資格情報など)の開示も含まれています。

 以上のように、URACは医療系サイトで提供される情報やサービスの品質を確保す
るため、コンテンツの編集方針やサービスの提供法に関し、非常に細かな倫理基準
を設けています。ここでは、個別の内容についての絶対的な基準を提示するもので
はなく、利用者が情報やサービスの利用を自分で選択する際の判断材料として、サ
イトの運営方針に関する事実情報を開示することが主眼とされています。

 このURACのWebサイト認定基準は、昨年の7月に発表されたものですが、以前に紹
介したeヘルス倫理コードや、同じアメリカの大手医療系サイトが採用している
Hi-Ethicsと内容がよく似ています。似ているだけでなく、相互に関係があり、交流
がはかられているようです。この辺は民間のプライベートセクターの立場を生かし、
自分が一番と主張することなく、お互いが共存して協力、補完しあっているところ
が特徴的です。 Hi-Ethicsは、14項目からなる基準原則の実行にあたり、URACのWeb
サイト認定基準に拠っていきたいと表明しているほどです。

 私たちも、2000年秋頃から向こうの動きに注意を払いながら、いろいろ勉強させ
ていただきました。その結果は、昨年6月から始めたJIMAのトラストプログラムのセ
ルフアセスメントにも反映されていたと考えていますが、このURACの認定基準を読
みながら、改めて共通点を感じた次第です。

 URACのWebサイト認定基準は、この後、プライバシー保護やセキュリティの問題に
関しても、12項目にのぼる規定をあげ、細かな原則を提示しています。詳細は割愛
させていただきますが、医療分野での個人情報は、パーソナルヘルスインフォメー
ション(PHI)と定義して、WebサイトでPHIを収集する際には、必ず利用者のオプトイ
ンを得ることを強調しています。ここでいうオプトインとは、利用規約のようなか
たちで、Webサイトが利用者の個人情報の収集と引き換えに提供されるサービスの内
容をあらかじめ利用者に正確に開示した上で、利用者が自らの意思でこれらのサー
ビスを利用するか否かを意思決定できるようにすることをさしています。10ページ
以上にのぼるURACのWebサイト認定基準は、最後に、Webサイト所有者が Webサイト
上で行うすべての活動について、それを統括するポリシーと実行手順 (Policies and
Procedures)を確立し、これを文章として明文化し、運用管理することとしていま
す。

 また、これらのポリシーが正しく実行されるよう、事業者や組織の内部で「品質
管理委員会」のようなものを設置し、日常的に監視、評価、提言ができるようにす
ることを求めています。医療機関や事業者にとって、Webサイトの運用は個人レベル
の情報発信でなく、組織として管理すべきものであり、そのためにはWebサイトの品
質の管理に責任をもつ委員会の設置が不可欠である。この委員会の構成メンバーと
して、医療コンテンツに責任をもつ専門医師、並びにWebサイトでのプライバシーポ
リシーに関して責任のある者が含まれることを条件としています。

 現在、このWebサイト認定基準をパスして、指定の認定シールを掲示しているサイ
トが 13件あります。その中には、大手ポータルのWebMD社や、NLM(国立医学図書館)
のMEDLINEplusなどに医学情報を提供しているADAM社などの名前があがっています。
サイトの数としては、まだ少ないのですが、こうした活動が今後どのように展開さ
れていくか日本からも注目されるところです。

■参考サイト:
・URAC
  http://www.urac.org/
・eヘルス倫理コード(日本語訳)
  http://www.jima.or.jp/trustguide/ehealthcode.html

                              (2002.3.31)

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【3】ネット上の医療(健康)サイトの質の確保をめざすガイドラインの最新報告
    〜 その3 Hi-Ethics倫理規範の紹介 〜
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 JIMAニュース第9号でインターネット上の情報やサービスの質の向上をめざす海外
NPOの紹介ということで、URACの活動をとりあげさせていただきましたが、今号では、
同じアメリカのHi-Ethicsを紹介させていただきます。

 Hi-Ethicsは、Health Internet Ethicsの略です。インターネット上のヘルス関連
のサービスを利用するコンシューマーの信頼を確保するため、大手のポータルサイ
トを運営する会社が働きかけてできたNPOです。現在のメンバー会社のリストには、
A.D.A.M、allHealth.com/iVillage、America Online、HealthCentral.com、
HEALTHvision、Healthwise、InteliHealth、LaurusHealth.com Medscape、Veritas
Medicine、WebMD、WellMedなどの名前があがっています。

 Hi-Ethicsの目標は、プライバシーやセキュリティ、情報の質の確保などにおいて
高い基準を設け、これに従っていくことにあるとしています。1999年11月から倫理
規範の策定作業にかかり、2000年5月に14項目からなるHi-Ethics Principlesを仕上
げたと記されています。

 その14項目は以下のようなものです。

 1.プライバシーポリシー(Privacy Policies)
 2.医療(健康)に関する個人情報の高度な機密保護
 3.第三者との業務提携におけるコンシューマーのプライバシー保護
 4.主体者情報とスポンサーシップに関する情報開示
 5.広告並びに第三者のスポンサーによる医療情報コンテンツの区別
 6.宣伝的勧誘、リベート、無償サービスについて
 7.ヘルスインフォメーションコンテンツの質について
 8.著作表示と説明責任(Authorthip and Accountability)
 9.セルフアセスメントツールに関する情報源と根拠の開示
 10.プロフェッショナリズム(Professionalism)
 11.資格(Qualifications)
 12.相互作用、公正、信頼性に関する透明性
 13.制限事項の開示(Disclosure of Limitations)
 14.コンシューマーからのフィードバック受付体制

 項目名をみていただければわかりますが、内容的にはこれまで紹介してきたURAC
や eHealth Code of Ethicsの中身と似たようなものであります。プライバシーの取
り扱い方、情報の質、コンテンツの編集方針とスポンサーシップの開示、プロフェッ
ショナリズム、利用者のフィードバック体制等、共通して重要なテーマがとりあげ
られています。

14項目はあっても、全体の文章量としては多くなく、他に比べても簡潔でわかりや
すいことが特長です。

たとえば、プライバシーポリシーの項は以下のようになっています。

1.プライバシーポリシー(Privacy Policies)

 私たちはコンシューマーの目に付きやすく、読みやすく、理解しやすいプライバ
 シーポリシーを採用します。私たちのプライバシーポリシーは、

 A. 情報利用に関し、利用者に以下の事項の開示を含む適切な通知を行っていきま
   す。 
  1.利用者に関する情報を収集したり、利用していることについて
  2.統計データの利用について
  3.ヘルスWebサイトで収集された個人情報に対し、第三者からどのようなアクセ
   スがあるかについて(起こりうる場合)
 B. 第三者への情報の移転に対する同意を含め、コンシューマーの個人情報を収集、
   利用することに対し同意あるいは拒否の選択ができる権利を提供します。
 C. 誤って収集された個人情報に関し、積極的にセキュリティ対策に取り組むこと
   を約束します。 
 D. 私たちが維持管理する、その他の利用者の個人情報を変更した時に起こりうる
   ことの記述も含め、自分の個人情報を適宜、確認、修正、削除したりできる機
   会を提供します。

 プライバシーに関しては、オプトインによって同意を得た以外の用途には利用し
ないことを示し、第三者との業務提携における個人情報の扱い方について細かく規
定事項を設けています。
 「主体者情報とスポンサーシップに関する情報開示」に関しては、サイトの所有
者名 (Ownership)の明示だけでなく、運営面で資金支援しているスポンサーがあれ
ばこれを開示することも求めています。10%以上の株を所有する株主の開示など、
条件を具体的にあげています。

 「広告並びに第三者のスポンサーによる医療情報コンテンツの区別」については、
文言やデザイン、配置場所などにより、コンテンツと広告が明確に区別されること
を求めています。また、自社広告だけでなく、他社のスポンサーシップによるコン
テンツの提供や広告に関しても、コンシューマーの目につきやすいところに、読み
やすく理解しやすいかたちでポリシーを掲示することも求めています。その中には、
利用者情報や統計データの提供によって、第三者から利益を得ているかどうかの開
示も含まれています。

 コンテンツの編集方針を利用者に開示することは、コンテンツの質をたえず自分
で評価、チェックする上でも重要なこととされていますが、特に医学情報の場合は、
情報の出所や作成日などの記載は欠かせないものとして強調されています。第8項の
「著作表示と説明責任(Authorthip and Accountability)」では、第三者が著した情
報を再利用する場合には その作成者名、情報源、作成日、最終更新日などを掲示す
るものとしています。内容によっては、著作者に関する一般的情報のほか、専門家
によるレビュー手法についても情報提供を行うべきだとして、Accountability を強
く求めています。

 情報やサービスの受け手であるコンシューマーの信頼に応えるには、サイト運営
者はコンテンツの作成法やプライバシーの扱いなどサイトの運営方針のひとつひと
つについて、公正さ、透明性を確保しながら、利用者が納得できるようなかたちで
説明していく姿勢が、Hi-Ethicsの倫理規範全体の中で要求されているようです。こ
れは他の倫理規範やガイドラインにも共通するものでもあります。
 Webサイトの運営に関しては、誰が運営しているか(Ownership)、誰が書いたもの
か (Authorship)、誰がスポンサーか(Sponsorship)といった点から、Accountability
を果たしていくことが求められているわけです。

 このHi-Ethicsは、現在バージョン1ということで、今後、バージョン2に向けて、
改訂が準備されているということです。2001年5月には、URACが始めた医療サイト認
定プログラムの賛同を表明し、7社がすでにURACの認定を受けたことも発表されてい
ます。そのURACは、世界最大のプライバシー保護団体であるTRUSTeとパートナーシッ
プを組んで、医療分野でのWebサイトのプライバシー保護認定プログラムを開始した
ことが報じられています。折しも、アメリカでは、2003年4月からのHIPAA法の完全
施行を迎え、プライバシー対策が急務となってきて、プライバシー保護や情報の質
をめぐるEthicsが関係者のキーワードにもなってきているようにうかがえます。ヘ
ルスケア業界では、この6月にワシントンで「ETHIC 2002」というタイトルの会議な
ども予定されていて、Ethicsに対する関心の高まりを示しています。

■参考サイト:
・Hi-Ethics
  http://www.hiethics.org
・URAC
  http://www.urac.org/

                              (2002.5.31)

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【4】ネット上の医療(健康)サイトの質の確保をめざすガイドラインの最新報告
    〜 その4 AMA(アメリカ医師会)ガイドラインの紹介 〜
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 これまで、インターネット上の情報やサービスの質の向上をめざす海外のガイドラ
インとして、eHealth Ethics Initiativeのeヘルス倫理コード、URAC、Hi-Ethicsなど
を紹介してきましたが、最後にAMA(アメリカ医師会)のガイドラインをとりあげさせて
いただきます。
 AMAのガイドラインは、医療のプロフェッショナルの集団であるアメリカ医師会が
作成したものだけあって、プロフェッショナルとしての倫理に裏付けられた質の高い
ものになっています。これまでとりあげたガイドラインに比べて内容的にもレベルが
高く、他のガイドラインにも影響を与えていることは明瞭です。
 ガイドラインの全文は、アメリカ医師会のサイトに公開されています。現在のかた
ちのものが完成したのは、2000年2月28日とされていますが、公開にいたるまでに5年
の月日がかかっています。その経緯を見ると、ガイドラインの中身がAMA自身がイン
ターネット上でさまざまな情報発信を行う、その流れに沿って検討されてきたもので
あることがわかります。

 1995年、AMAのサイトで、JAMA(アメリカ医師会誌)の各号のコンテンツタイトルと抄
録を Webで公開、1996年には医師会に登録中の医師全員の名前、専門、所属が検索で
きるデータベースの提供を開始、1997年にはコンシューマー向けのヘルスケア情報を
提供するヘルスインサイトという名の専門サイトを開設、1999年9月にはJAMAの全文記
事がオンラインで検索できるサービスの提供を始めました。
 これらのサービスに合わせるようにして、Webで提供される情報を自主的に規制する
ガイドラインが生まれてきました。たとえば、当初、印刷物のみ対象としていた広告
に関するガイドラインは 1995年にWebサイトにも適用できるものに改訂されました。
1997 年には、ネット上の医療情報の質に関するガイドラインを策定、この中には、コ
ンテンツの著者名や情報源の明示、サイトの所有者に関する情報開示、広告スポンサー
に関する情報提供、コンテンツのアップ日や更新日の明記の規定も含まれていました。
1999 年には、リンクに関するガイドラインもできています。
 そして、ようやく1999年には、個々に策定されてきたガイドラインを一本化しよう
という提案がなされました。扱う項目は大きく分けて、コンテンツ、広告とスポンサー
シップ、プライバシーと守秘、そしてeコマースの四つに分類され、包括的にまとめた
ガイドラインのドラフト案が提示され、内外の有識者のレビューを受けました。続く
何度かの修正を経て、2000年2月にAMAの執行委員会の最終的なレビュー、承認を受け
たとされています。

 この経緯からもわかるように、AMAのガイドラインは、初めから包括的に作成された
ものでなく、Webサイトを通じて実際に情報やサービスを提供していく際に提起される
さまざまな課題に対応していく必要に応じて、順次、検討されてきたものであること
がわかるのです。
 しかも、ガイドラインの内容は固定のものでなく、今後も環境の変化に合わせて、
再評価されながら、発展していくべきものとされています。また、このガイドライン
は、AMAのWebサイト用にまとめられたものですが、同様に医療情報を提供する他のヘ
ルスケア関連のサイトにも適用できるものあることをうたっています。

 さて、AMAガイドラインは、以下の4部から構成されています。

1 PRINCIPLES FOR CONTENT
2 PRINCIPLES FOR ADVERTISING AND SPONSORSIP
3 PRINCIPLES FOR PRIVACY AND CONFIDENTIALITY
4 PRINCIPLES FOR E-COMMERCE

 1のPRINCIPLES FOR CONTENTは、コンテンツに関するガイドラインです。インター
ネットができる前から、AMAではJAMAをはじめとした印刷媒体を発行してきた経験か
ら、コンテンツのあり方に関して堅実なポリシーができあがっていたようです。医学
系の書籍や専門誌を編集する際の編集方針が、デジタルコンテンツの領域にも生かさ
れていることがうかがえます。
 他の三つの項目に比して、コンテンツに関するガイドラインは充実しているのも当
然かもしれません。

 その内容を少し紹介させていただきますと、まず、コンテンツには、文章、写真、
表、音声、ビデオ等、あらゆる形があることを定義した後、以下のように細かな基準
をあげています。

・Webサイトのオーナーシップ(所有者)を明記すること。
・コンテンツを閲覧するのに必要なプラットフォーム、ブラウザに関する情報を提供
すること。
・コンテンツへのアクセスに登録作業やパスワードが必要な場合は、そのことがその
ことがすぐわかるようにする。
・有料で閲覧・利用できる情報がある場合は、そのことがすぐわかるようにする。
・コンテンツのレビューに関しては、オリジナリティ、正確性、信頼性において情報
の質を事前にレビューする。この際、評価者はコンテンツの製作者自身でない他の専
門家を起用すること。
・言語は利用者のレベルにあわせること。文法、スペル、文章構成の面からもチェッ
クする。
・編集方針、レビューの方法もサイト上に記載しておく。
・情報のアップ日、更新の日付を明記する。
・コンテンツの著作者名、所属等のソースを明記する。参考資料がある場合は適宜記
載しておく。
・サイト内のナビゲーションについては、閲覧者がいつでも元のページに戻れるよう
にする。閲覧者が望まないページに誘導しないこと。許可なしに他のサイトのページ
を自己サイトのフレームに取り込まないこと。
・PDFファイルなどダウンロードすべきファイルがある時は、必要なソフトの入手法も
含めてその方法を案内する。
・コンテンツのナビゲーションのためにサイトマップやサーチエンジンを用意したり、
FAQのページを設けたり、問い合わせ等のフィードバック手段を提供すること。

 ガイドラインの前文でも書かれていることですが、コンテンツの提供にあたって情
報提供側にこのような細かな配慮を求める背景として、これまでWebサイトの利用者は
不完全で、不正確、誤った情報を利用する恐れがあることを警告されてきた、しかし
ながら、これに対抗するためのレイティングには限界がある、質の評価を行うための
絶対的な基準がないならば、少なくとも、従来のメディアを利用する時と同じような
評価基準が適用できるはずだ、という考え方も述べられています。

 この方針は、続く、第二部の「広告とスポンサーシップに関する原則」にも反映さ
れています。その内容はAMAの出版物における広告の原則がベースになったとされて
います。実際に、AMAのWebサイトにおいて、広告スペースが提供されていて、編集コ
ンテンツが広告の影響を受けないようさまざまな条件を課しています。
 以下のような具合です。

・コンテンツと同じトピックの広告は同じ場所におかない。
・広告の制作スタッフは、広告が掲示されるページのコンテンツの内容を予め知るこ
とを許されない。
・広告と編集コンテンツは明確に区別すること。区別が不明瞭な時は、「広告」と
明記すること。
・1ページにつき、広告は1件。トップページには広告のアイコンはおかない。
・閲覧者の意図に反して、広告のページに誘導しないこと。
・広告のページや外部のスポンサーのサイトにリンクで移動する時は、間に緩衝用の
ページというべき"buffer page"を用意し、たとえば、「あなたはAMAのサイトを離れ
ます。×××社のサイトに行きたい時は、下のボタンをクリックください。行きたく
ない時は、BACKボタンで戻ってください」というような案内を入れる。

 この最後の手法は、かなり徹底したものだと感心しますが、AMAのサイト以外にも実
際にこのような方法を採用している民間の医療情報サイトを見かけることがあります。
 また、スポンサーシップに関しても、コンテンツの制作にあたり、何らかの金銭的
または金銭に代わる援助を受けている場合は、そのことを開示することを求めていま
す。その場合、支援元に関する情報も提供することが望ましいとしています。

 第三部の「プライバシーと(患者情報の)守秘に関する原則」では、これまで他のガ
イドラインでみてきたのと同じようなプライバシーの扱いに関するさまざまな注意事
項があげられていますが、これらに加えて、患者の医療情報を本人の了解なしに公開
することを禁じています。従来の医療出版物においても徹底されてきた原則として、
ヘルスケアのプロフェッショナルは、患者の診断・治療にかかる情報やデータを開示
する際には、プライバシーに関して、法的、倫理的な配慮を忘れてはならないとして
いるのです。
 媒体は、印刷物、デジタル画像、オンライン、オフラインの区別はなく適用されま
す。また、患者の同意をとることができる当事者でない場合、たとえば編集者として
この種の情報を扱う場合は、ドクターや研究者に対し、インフォームドコンセントを
とったかどうかを確認することを求めています。同意がとれている場合は、そのこと
をWeb上に明記すべきものとしています。

 このように、AMAガイドラインの中でも、医療コンテンツの中での患者の個人情報の
取り扱いに関しては、ひときわ厳格な編集ポリシーが定められているわけですが、こ
のガイドラインの起草者のひとりが、JAMAの副編集長のMargaret A.Winker 女史であっ
たことで、うなづけるものがあります。因に、このWinker女史は、2000年10月ラスベ
ガスで開催された、"Quality Healthcare Information on the 'Net 2000"で、このガ
イドラインについて自ら解説を行い、他のアドボケートたちと並んでシンポジウムの
熱っぽい議論の輪の中に参加していました。その若さと、AMAの中での実際の仕事ぶり
を比較して、感心させられた次第です。

 第四部の「eコマースに関する原則」は、主としてネット上で、ヘルスケア関連の有
料サービスを提供する時などの注意事項をあげたものです。プライバシーやセキュリ
ティの確保に関し、テクニカル的な留意点をいくつかまとめています。
 一般的な注意にあわせ、サービス利用時の問い合わせ手段(電話、FAX、メール)をき
ちんと確保すること、事務オペレーションにかかる時間を明記しておくこととしてい
ます。また、製品やサービスの注文、決済、受け渡しに関する情報は、事前に詳しく
提供することを求めています。

 以上のように、AMAガイドラインは、医療プロフェッショナル向けのガイドラインに
ふさわしく内容的にもよく吟味されたものになっています。しかし、厳しいながら、
いずれも実行可能なもので、他のヘルスケア関連のサイトでもここに書かれた基準が
実際に採用されているのをみます。ガイドラインの前文にある文章は、違う場所でも
紹介させていただきましたが、インターネットのような情報技術が医療で果たす役割
を以下のように明確に定義していることでも注目をひきます。

 Access to medical information via the internet has the potential to speed
the transformation of the patient-physician relationship from that of physician 
authority ministering advice and treatment to that of shared decision making 
between patient and physician.

 インターネット上の医療情報にアクセスできるようになって、患者と医師の関係が
変わり、従来の権威主義から、意志を共有する対等の関係になるだろう、と言ってい
るのです。
 この文章の後には、こうした期待される変化を阻害するものとして、情報の質とプ
ライバシーのふたつの問題があることを指摘、これらの問題の解決に向けてAMAガイド
ラインが検討されることになった旨が述べられています。

■参考サイト:
・AMAガイドライン
  http://jama.ama-assn.org/issues/v283n12/ffull/jsc00054.html
・アメリカ医師会
  http://www.ama-assn.org

                              (2002.7.31)

   
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