患者・住民が求める医療情報とインターネットでの提供状況に関する調査研究 JIMAマーク

 研究報告書



    本研究は、文部科学省科学研究費補助金(基盤研究A)「健康・医療情報の適切な創出・伝達・
    利用を促進する社会的基盤整備に関する研究」(代表・中山健夫)によるものです。


   患者・住民が求める医療情報とインターネットでの提供状況に関する調査研究



 主任研究者: 中山 健夫 京都大学大学院医学研究科社会健康医学専攻系健康情報学教授

 研究協力者: 三谷 博明 特定非営利活動法人日本インターネット医療協議会事務局長



<研究要旨>

 平成18年度からの国の医療制度改革で、「患者の視点に立った、安全・安心で質の高い医療が受けられる体制の構築」が掲げられ、そのために、「医療情報の提供による適切な医療の選択の支援」を行っていくことが行動目標として定められた。さらに、改正医療法により、都道府県による医療情報の集約と公表(医療機能情報提供制度)、自分の住む地域の医療機能や医療機関の連携の状況を医療計画により明示する(医療計画の明示)、患者・住民に対し、広告できる事項を拡大する(広告規制の見直し)等の制度的裏付けもできて、実際的にスタートすることになった。

 本研究では、「患者視点に立った医療の実現」という制度改革の趣旨が、これら具体的施策を通じ、どのように実行されているかについて評価を行うために、制度の実施状況を調査、現時点での課題や問題について考察を行うことにした。

 医療機能情報提供制度については、平成19年度から制度運用が始まり、病院・診療所等は自機関の医療機能情報を都道府県に報告、都道府県は集約した情報をインターネット等を通じて住民にひろく提供することになった。都道府県では、2年目の20年度中に、詳細情報を含めた医療機能情報を提供開始しなければならないが、すでに19年度中にも詳細情報も含めた全情報を提供開始している自治体もあれば、20年度末近くになって提供開始したところもあり、提供開始日に差が見られた。また、情報へのアクセスビリティは、都道府県のトップページからわかりやすく案内されているところもあれば、該当の情報がなかなか見つからないところがあった。また、診療科目や地域別の検索機能以外に、地図登録やかかりつけ医登録の機能を付与するなど、付随して提供するサービスにも違いがあった。

 医療計画については、都道府県ごとに行われる医療機能調査、その調査結果のとりまとめを受けての医療計画の見直し、新たな医療計画制度の実施というように、医療機能情報提供制度に平行したスケジュールが予定されていたことから、医療機能情報の提供にあわせて、医療計画に関する情報がどの程度提供され始めているかを調査した。平成21年1月の時点で、医療機能情報ページからリンクされた医療計画に関するページで、医療計画に関する説明があり、疾病・事業ごとの医療機能を担う医療機関の一覧まで提供されているところは、7都県しかなかった。その中でも、神奈川県のように、医療計画における医療機関名と医療機能情報をリンクさせ、住民がわかりやすく検索できるようにしている県もあった。医療計画という用語は、まだ一般には馴染みがないことばであり、医療計画制度そのものの説明もあわせ、住民へもっと周知・広報していく必要があると思われた。

 広告規制の見直しについては、これまでの医療法における広告規制の緩和措置の流れを受け、広告可能な事項を個別に規定する方式から包括的に規定する方式に変更、事前規制から事後規制の考え方に改めるとともに、対象となる医療機関向けに詳細な医療広告ガイドラインを作成・発表した。そこでは、インターネットは広報とみなし広告として扱わないとの原則は残しつつも、一部ケースにおいては広告に該当する場合もあることが明示されていた。そのガイドラインの実効性を評価するため、大手検索エンジンで「審美歯科」や「アンチエイジング」等のキーワードで検索してみたところ、検索結果ページの広告に該当する場所に広告として不適切扱いとなる用語が表示されるなど、違反が疑われる事例が発見された。医療機関がホームページ等を通じて、患者・住民が求める情報を、きめこまかく提供していくことは「医療の選択の支援」に役立つが、広告として不適切な情報が放置される状態は、利用者の安全確保の観点から望ましくなく、早急な対策が必要であると思われた。 また、インターネットに関しては、東京都が「広報のガイドライン」を作成したり、民間NPOレベルでガイドラインを自主的に運用するなどの取り組みもなされているが、ガイドラインの普及度やその実効性について課題があることがわかり、改めて議論を重ねていく必要があると思われた。

国の医療制度改革の方針を受けての「医療情報の提供による適切な医療の選択の支援」という行動目標は、制度的バックアップを得て当初の趣旨どおりに展開実施されるとするなら、患者・国民に少なからずメリットをもたらすものと思われるが、実際の制度運用は自治体にまかされているようであり、考え方や取り組み姿勢の差が、医療機能情報の提供ページのつくりや運用体制の差になってあらわれているようにうかがえた。 患者主体の医療の実現をめざしてつくられたこれらの制度の運用を行政任せにせず、患者・住民が自らに関係する事柄として見守り、評価し、生じた課題や問題に一緒に対処していくという姿勢が今後必要になってくると思われる。

                                                   (2009年4月)



<研究報告書>

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